アパレルをはじめとする大手・中堅企業の「ビジネスのプロ」とクリエイション企業である「ものづくりのプロ」が出会うことで新たなビジネスモデルを創出しませんか?
私たちは日本のアパレル産業発展のため、「JAFIC PLATFORM」を運営しています。

現在のクリエイター登録数44

現在の企業登録数100

株式会社 ファッション須賀・株式会社 ハッカ

代表取締役 須賀次雄氏

2017.03.29

Company

 

—会社設立の経緯を教えてください。

僕は文化服装学院でデザインを4年間勉強していました。

パートナーである葉山啓子、現在の子供服の責任者など、当時デザインを勉強していた同期4人が集まり、パリから帰国後、「白花」メーカーを始めました。

マンションメーカーというものが流行った時代に、ただ物を作る発想で会社はスタートしました。

僕以外は全員女性のため力仕事は全て僕が担当しましたが、メーカー勤務の経験が無かった為、ものを作るといくらになるか、どう利益を出すのか、伝票の書き方すら分かりませんでした。

婦人服から始まり、子供服は雑誌社から頼まれてコマーシャル用に作り始めました。

現在は婦人服、子供服、食器などのテーブルウエアを扱うブランドがあります。更に飲食事業も展開しています。店舗は全部で約100店舗、パリに一箇所事務所があります。

 

婦人服では「SUPER HAKKA」が一番長いブランドです。

当社はデザイナーがあまり変わらず、深い関係性で長年続いています。葉山と私は商品一つ一つに目を通し、全体的なデザインのディレクションをしています。

 

 

—子供服や食器など、取り扱う分野を広げたきっかけを教えてください。

子供服をスタートした40年ほど前の時代では、子供服はこうあるべきというテーマが一般的に決まっており、それが自分達としては面白く感じませんでした。

ある雑誌の依頼で「子供服実験室」という企画に取り組んだのが始まりで、徐々に話題になっていきました。

 物作りの面では婦人服とあまり変わりません。

デザインは売れる為にある物と、こうあるべきだという物があり、企業は年を取るにつれて、売れる為の仕組みが段々と必要になっていきます。

 

生活の中で、色々なデザインがありおしゃれ感がある事は、人間にとってとても楽しい事だと思っています。

なので、ドキドキワクワクする物を作らなければいけない。それは洋服も食器も同じ事なので、そういったコンセプトで展開しています。

 

テーブルウェアを始めたきっかけは、プロヴァンスの鮮やかな発色に、和風の絵が妙にマッチした食器を見つけたことです。

作ったフランス人は来日した影響でそのような物作りを始めたそうで、日本でも紹介する事になりました。ただ売るだけでは面白くないと思い、経営していたカフェで使い始め、徐々に海外からから輸入するようになりました。

 

 

―当時海外での製造や輸出入は珍しかったと思いますが、苦労した点はありましたか。

最初はタイの工場から要請があり、タイでの製造を始めました。

ただ、僕らの作るジャンパー一枚をあちらで作ろうとすると、現地の給料一ヵ月相当になってしまいます。それでも何年か運営をしていました。

 

数年後、タイの既製服メーカーさんと一緒にヨーロッパ販売旅行のような旅をさせて貰いました。

その中で日本のデザインとタイの製造技術をヨーロッパに持っていこうと思い、パリの展示会に参加することになりました。

しかしタイは、技術力は付くけれど素材力がカバーできない。やはり日本の素材はレベルが高いです。コストと品質のバランスがうまく取れず、結局タイでの製造は途中で辞退しました。

パリに事務所を設けたことで、広範囲な輸出入をしようと、ブランケットやおもちゃなど生活雑貨の仕入れを始めました。

 

「Ribbon hakka kids」という店舗では、洋服にプラスして生活雑貨の色々なアイテムを取り扱っています。メイン店は現在六本木ヒルズにあります。

子供服は単価設定や内容など、最初はビジネス的な部分で苦しみました。子供のアイテムは扱いに特に気を遣います。お皿一つでも、日本は特に規制や検査の安全基準のレベルが高いです。

 

 

 

―ライフスタイルを重視することについて、どう思われていますか。

生活をより良くしようとか、楽しもうとすると、色々なアイテムが必要になってきます。タオル一つでも色や肌触りにこだわったり。

 

ある意味、洋服以外の部分でもファッション性は出しやすく、重要だと思っています。

ヘルシーで美味しい食べ物、可愛いテーブルクロスにこだわることなども、文化的に豊かかなと思います。

 

 

―会社としての今後の展望を教えてください。

一つ一つのブランドがもっと光り輝くようになればと思います。

先述したように、量を望まないとなると、生産問題などを含めた仕事の精度を増さなければなりません。

好きな事をして利益が出れば一番の幸せなので、どれだけ精度を増しつつ儲けるかというのが、考えるべきことです。

 

 

― JAFICに期待する事業を教えてください。

当社はスタートしてからほとんど同じメンバーなので、今までは若い人材が入ってくる余地がありませんでした。最近になって若返らせなければと思っています。

メーカーさんは若い人材が欲しいけれど、中々見つからないことが多いです。

若い人は私たちと同じように、独立に興味のある方が多いのではないのでしょうか。

決められた仕事でない事の楽しさというものもありますから、何とも言えないですね。

 

 

-ご自身のキャリアを振り返って、学生のうちにやっておくべき事などアドバイスをお願いします。

僕の先輩には、文化服装学院出身の優秀なデザイナーや経営者がたくさんいます。

彼らを見て、僕らも学生を集めて会社を立ち上げました。

興味が多岐に渡ること、怖いもの知らずであることから、何でもできるのが学生の良い条件です。そういう意味では、色々な経験をしておいた方が良いと思います。

それと、強気を崩さない事。大人になって年をとっていくと、守りに入りがちなので(笑)

 

 

― この業界に必要な人材はどんな人材だと思いますか。

この業界は色々な職種があり、結構良い加減な部分もあって、それが面白いところですね。

日々新しい事に気がついたり、昨日まで最高だったものが今日になって違うものが最高になったりとか。それを平気で言い通さなければいけません。

ポリシーがあれば変化に気付くけれど、それが無いと曖昧なものになってしまう。

ただその曖昧な中でも、新しいものを見つけようとする意欲があれば、認めさせる事ができると思っています。そういう気持ちの人が沢山活躍してくれたらと思います。

 

スタートが簡単とは思わないけれど、時代の変化というのは凄く大きい。

ただ、日本人が培ってきたものづくりの精神力は、世界水準で言えば大変高いです。これは特徴的に優位なところであり、世界でビジネスに繋げる事ができれば、もっとメリットがあるかなと思います。

 ファッション産業としては、まだまだ持っていく方法が広範囲にあると思っています。

 

一企業の社長でありながら、文化卒という異色の経歴をお持ちの須賀社長のお話は大変貴重で新鮮でした。

ドキドキワクワクするもの作りをしなければいけないという、もの作りに対する熱い想いと、社長や社員さんのお人柄から伝わる社内のアットホームな印象に惹かれました。

ご本人も仰っていた、心の豊かさについて考える機会となりました。

お忙しい中ありがとうございました。

編集:橋爪彩夏(実践女子大学 生活科学部)

ページのトップへ