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マツオインターナショナル株式会社

代表取締役社長 松尾憲久氏

2017.03.21

Company

ー はじめに、会社概要を教えてください。

 

 

 1958年に私の父が、大阪に松尾産業というテキスタイルの会社を創業しました。

 

その後、私が1984年に入社し、1985年の12月に、渋谷区を本社としてセンソユニコを起こしました。

 

 

 センソユニコというのは、道路交通標識のイタリア語で一方通行と言う意味ですので、提案型で行こう、独立独歩でいこう。そしてセンスユニークな商品を提供し、コピーはしない。そのような思いで続けてきました。

 

 

 ただ、南イタリアにセンソユニコという名前で会社を登録しているところがあったため、ホームページアドレスが取れず、グローバルに通じるという事もあり、海外出店を機にマツオインターナショナルに社名を変更しました。

 

 

 

 

 

 センスユニークさというのは何かというと、3つあります。

 

1つ目はファブリック(素材)にオリジナル性があるという事。

 

テクスチャー、織り柄が面白かったり、素材加工の技術で秀でたものを作っていこうということ。

それに付随して、ファブリックブロッキング(他産地コーディネート)と言って、例えば尾州のウールと浜松の綿を1枚の布の中でドッキングさせたり、接ぎ合わせたり。素材そのもののテクスチャーにもこだわり、産地を越えたものを持ってきてドッキングするという事を、早い段階から始めていきました。

 

 

 

 

 

2つ目のこだわりは体型のカバー力。

 

大きめの婦人服という意味ではなく、いろいろな意味で年を重ねた方の体型をカバーし、美しい部分が見えるような、お洋服を作っていきたいという事です。

 

 

それから着心地が良かったり、自分の欠点を隠してくれたりするお洋服を作っていこうと思っています。それは、我々がミセスの服をターゲットにしたからだと思います。

 

 

よく、若い人の服は作らないんですかと聞かれます。

昨年度、53年間勤めた学卒第一号の社員が定年を迎え、70歳で退職しました。スタッフを終身雇用していこうと考えたら、若いターゲットのブランドでは対応できません。50歳や60歳になっても働いていただけるような会社に、そのための商品にしたいという思いもあります。

 

 

それから素材の良さを分かっていただこうと思うと、素材の個性が強いと若い人に似合わないんです。おばあちゃんのお着物を若い人が着たら、重すぎて似合わないのと同じですね。

 

 

我々が差別化したものを売っていこうと思うと、着こなしてきた歴史のある方でないと、似合わないなというのもありました。

 

 

 

 

 

3つ目がスーパーインポジション。レイヤードを重視した、ジーンズにTシャツというファッションでもないし、アイテム専業という訳でもなくて、いろんな意味で重ね着をして、一つのスタイリングができるような、そういうブランドを作っていきたい。

この3つですね。

 

 

 

 

 

ー 今後の会社としての展望をお聞かせください。

 

 

 

 いろいろな意味で、今一番展望が見えない時代に入っています。

 

やっぱり、一番大きく効いてきているのが少子高齢化。

 

買い手も少なくなっているし、売り手も少なくなっている。そういう人口減少にどう対応していくかが大きな課題だと思います。

 

 

 

もう一つの課題は建物ですね。人口は減っていくのに、古いものを壊して新しいものを建てていますよね。

 

一度建てば50年は潰れないけれど、70年経つと危ない。日本の場合は地震が沢山起こるので、各百貨店は次々と耐震補強に追われています。

 

そういう建物はこれからどんどん出てくると思います。

 

 

地方で商店街がシャッター街になってしまった所があるように、今度は廃墟のようなビルが出てくるのではないでしょうか。ゴーストタウンならぬ、ゴーストSCですね。

 

 

私は地方好きなので、地方の百貨店さんやそこの人たちと再生ビジネスに取り組んでいる事が多いです。

各々地方都市の有り様が問われている時代の中で、単に商品を提供する場ではなくその土地の人たちが働く場所も提供しながら、ファッションを通じてそこの土地の方のお役に立てたらと思っております。

 

 

ー 企業として、またファッション業界において求める人材像は、どのような学生ですか?

 

 

 

 ものを作る段階から深く考えてくれる人は良いなと思います。

 

うちの場合は特に何かをオリジナル化しようというのがあるので特にそう思います。

 

 

 

 

当社は原則、新卒のデザイナーを採用していません。うちのお洋服を作ろうと思ったら、10年やそこらでは絶対と言っても良い程無理だと思います。

 

それは、1人のデザイナーがデザインを描くだけで無く、織柄と使う機械を考え、ニットならどのような糸をどうかけるか、という知識が必要だからです。逆にいうと、それだけ先が長いから辞めないんだと思います。

 

 

 

 

 どうすればデザイナーを長く続けられるか。

たどり着いた結論は、「ブランドコンセプトを決めない」事でした。

 

 

コンセプトを決めて、長い間同じものをこだわって作っていく事は素晴らしいけれど、時代と共に幾らか変わらなきゃいけない。

 

 

その時に何が変わるかというと、デザイナー本人です。本人がどうなりたいか、来年何を着たいかです。コンセプトを次のコンセプトに読み替えていってあげたら、デザイナーのクリエイションの方法が次に向かい、より広く深く活動できるようになっていく。

 

 

そして本人が変わっていく事を、周りは妨げないとしました。

 

 

 

 

 もう一つは、次のゴールを繰り返し作っていく事。

 

プリントができるようになったら次は先染めにいこうか、靴に挑戦してみようか、というように。ブランドが大きくなるに従って次の課題を出せば、研究テーマが大きくなって行きます。

 

 

 

 あとは、チャレンジングではあるけれども、人から学ぶ事に対しても謙虚で、生涯いろいろな事に興味を持って学び、実践し、自分の付加価値を高め、企業に貢献していける事が大切だと思います。

 

 

 

 

 

ー 展示会を見学させていただきました。

 

今日の展示会は、商品の展示会と言うよりもショッププレゼンテーションのための展示会で、マツオインターナショナルは今後このようなショップをご提案していきます、という展示会です。

 

 

 

ユニークなものを作りたい、素材にこだわりたいという企業の強い信念が伝わりました。

デザイナーが変わっていくことを周りは受け入れるという社風は、私にとって新しい概念でしたが、常に変化し存在し続けられるブランドはこのようにして生まれるのだと思いました。

 

またオフィスにお邪魔した際、皆さんが温かく迎えてくださった事が印象的でした。

 

普段から松尾社長が物だけでなく、人も大切にされている事がとても感じられる瞬間でした。

 

大変貴重で素敵なお時間をありがとうございました。

 

 

 

編集 : 橋爪彩夏 (実践女子大学 生活環境学科所属)

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