アパレルをはじめとする大手・中堅企業の「ビジネスのプロ」とクリエイション企業である「ものづくりのプロ」が出会うことで新たなビジネスモデルを創出しませんか?
私たちは日本のアパレル産業発展のため、「JAFIC PLATFORM」を運営しています。
現在のクリエイター登録数44件
現在の企業登録数100件
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代表取締役社長 北畑稔氏・ 社長 藤吉一隆氏
2017.03.29
Company
—会社概要を教えてください。
(以下、北畑社長)
1902年、佐々木八十八がレナウンの前身である繊維雑貨卸売業「佐々木営業部」を大阪に創業しました。
当初はメリヤス製品、香水や帽子、羽布団毛等を取り扱っていました。
ちなみに、今NHKでやっている「べっぴんさん」。ヒロインのモデルは他社さんの創業者ですが、その創業者の方の父親がレナウンの創業者の佐々木八十八です。
太平洋戦争の影響で休眠していた「佐々木営業部」を再発足させたのが二代目社長の尾上清です。
「レナウン」という名前は、大正11年に英国皇太子が訪日した際に乗っていた巡洋艦から取って商標に採用しました。後に「レナウン」は社名となりました。
2016年度でレナウン創業115年目を迎えました。
企業理念は「感性創造企業」、経営ビジョンは「豊かな心になれるコトを提供することで、世界に価値を発信し続けるグループ」です。
「品質のレナウン」「信頼のレナウン」という、これまでの歴史の中で築いてきた財産をベースに、お客様の視点を忘れず、新鮮で心豊かな生活づくりに貢献したいと考えています。
—取扱商品・ブランドを教えてください。
当社は事業領域、提供価値別に組織を作っているのが特徴です。
メンズのターゲットは幅広く、ビジネスからカジュアルまで取り扱っています。
一方、ウィメンズはカジュアル主体で、アダルトからシニアのお客様をターゲットにしています。
その他、ファミリーをターゲットにしたブランドもあります。
—商品を提供するにあたって大切にしている事は何ですか。
どれだけお客様の課題をブランドや提供価値やサービスで解決しているか、という事です。
安心・安全、作り手の想いやこだわりはもちろん大事ですが、他社さんとの差はつきません。
解決したいお客様の課題というのは、商品をご購入いただく際に悩まれること、例えば楽しみにしている旅行や同窓会に何を着たらいいのか分からない、素敵なお洋服も多いので選べない、どこで買えばいいのかも分からない、というようなことです。
そういったお客様の様々な課題を解決していくために、当社は存在しているという考え方です。
−社員さんとの関係で大切にしている事、取り組んでいる事を教えてください。
レナウンでは「人」は何よりも貴重な財産であると考え、人財と表現します。
性別、人種、年齢、障がいの有無は関係なく、スタッフには力を発揮してもらいたいです。
ダイバーシティ、ポジティブアクション(女性活躍の推進)、子育て支援、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)に取り組んでいます。
とにかく、多様性から強みを引き出そうと思っています。
結婚、出産など様々なライフステージで欲張って欲しいですね。イクメンも推奨していますよ。
今年の入社式にはご親族をお招きしました。
90名の新入社員に対し20名ほど来られて、社内の案内や懇親のためのパーティにも参加していただきました。
—会社としての今後の目標を教えてください。
お客様の課題をどれだけ的確に解決しているかを、見極めていかないといけませんね。
当社は今まで、ショップや売り場に足を運んでくださる方をお客様にしていました。
しかし今は、Eコマースという販売チャネルができています。
アパレル・ファッション製品の消費者にも、サイレントマジョリティのような人たちがいると思っています。
忙しい、服よりも大切な事がある、どこで何を買ったら良いか分からない、そういった課題を自身で抱えている方々に、橋を掛けなければいけない。
ここは考え方を変えなければならない点です。
少子高齢化、消費支出の減少、円安といった現代で、こういった方たちとどう繋がっていけるのかを考えないと、ファッション業界の将来の展望は無いと思います。
−JPFの取り組み事例を教えてください。
当社のレディスブランドで、ad addendaというブランドがあります。
50年ほどの歴史のあるブランドです。
ところが去年の売り上げが、前年比で90%に落ちてしまいました。
理由の一つに、デビュー当時は20代後半というターゲットでしたが、お客様を大切にしすぎたが故に、お客様が年を重ねるのと一緒にブランドのターゲット年齢が上がってしまいました。
ふと気がついたら、お客様の平均年齢が70代以上になっていました。
シニアのお客様は豊富にお洋服をお持ちになっており、例えば、コートを持っていないから買うという方はほぼゼロです。お客様はクローゼットに無い、今お持ちの服とは違った商品を求めています。
そんな時、JPFに登録されていた家永健司さんというクリエイターさんからアプローチがありました。
是非お願いしようという事で、2016年からad addendaの企画に関わっていただくことにしました。
社内の人財がどんなに優秀であっても、引き出しから新しいことが出てこない時があります。そして冒険がなかなかできない。
社長は新しい事をやれと言いながら、数字を落として良いとは言いませんから(笑)
しかし、外部の方のクリエイションが入る事によって角度が変わってきます。
改革もしやすい。
実際、結果は出つつあります。京都にあるad addendaの売り場では、ある期間昨年対比で141%と大きな伸びを示すことも出てきました。
当社ではこのように、JPFによって実績が出つつある事例がある事を、強調させていただきたいです。
−業界を目指す学生に求める人物像
主体的な意志を持って、感性・想像力を高める努力をしている、しようとしている人です。
更に、真摯で誠実であろうとしている人ですね。
服に対しての深い知識やアルバイトの経験の有無は特に問いません。
これからゆっくり勉強していけば良いですからね。
ただし内定後の学生さんで希望する方には、当社の直営店でのアルバイトをご紹介しますよ。
−今後のアパレル・ファッション業界について、期待する事はありますか。
現在のファッション業界は、同業者が多く、新規参入も多い環境です。
考えてみてください。ケチャップやマヨネーズで思いつくメーカーはいくつありますか?
かなり少ないですよね。
一方この業界では、市場占有率2%で大企業となります。
アパレル・ファッション業界は同質化していると言われています。
これは百貨店などにも言える事です。
すでに、老若男女が来る場所では無くなってしまったにもかかわらず、来店する客層に支持されるものを作ろうとしてきた結果、限られた客層向けの商品を提供するようになってしまいました。
このような同質化は、小売業とアパレルが一緒になって招いてしまった、お客様を大事にするが故の結果ですね。
ビジネスの将来を見据えたときに、今までと違った、お客様との付き合い方が必要だと考えています。例えば販売をするだけでなく、お貸しする、オフシーズンの服をお預かりしてケアするなどです。
服にこだわりを持たない方も多くいらっしゃいますが、そういった方の中には、先ほど申し上げた課題を抱えている方は必ずいらっしゃるはずです。
そのような課題を解決できる行き届いたサービスを見つけてソリューションしたいと考えています。
—レナウンアパレル科学研究所(略称アパ研)について教えてください。
(以下、藤吉社長)
私たちアパ研は、ISO 9001認証取得し、工業標準化認定試験事業者で公平中立を基本に考えているところで、自社でやっています。
お客様に、一定の品質保証と法律を遵守した商品を提供するため、品質評価をしています。
また、ISO 9001 認証取得した、工業標準化法登録試験業者で公平中立を基本に考えています。
業務内容は幾つかあります。
一つ目は、繊維製品の品質性能を評価する試験及び証明です。
染色堅ろう度、寸法変化率、混用率などの試験や、結果について必要とする報告書の発行をします。
ここには様々な試験に対応するため、普段目にしないような機器が沢山あります。
二つ目は、繊維製品の品質表示など法的表示事項に関する指示および指導です。
例えば昨年の12月に、服などについている取扱い表示記号タグに関する法律が改正・施行されましたよね。
その変更を見据えて、JAFICのコンプライアンス委員会内にある、私が委員長を務める品質管理小委員会で、業界統一のガイドライン作成に向けて様々な議論を重ねてきました。
実際に新しいタグの商品がお客様の手元に届いてから、小さな問題が出てくるかもしれませんが、何事も無くガイドラインが定着して欲しいです。
その他に、クレーム(消費者苦情)の原因調査や品質改善の指導なども行っています。
私たちは、製品を販売する事前と事後に検査を行います。
販売後にお客様からクレームなどがあった場合は改めて検査を行い、原因を特定します。
その結果もの作り上の要因であれば、改善を行い、再発防止や未然防止策を策定します。
だから、次の企画に生かす事ができるのです。
お客様の目には見えないところですが、商品の安心・安全を支えています。
ファッション業界の中でもアパ研は認知度も高く、頼りにされているのはありがたいことです。
今後、品質の管理に加え、お客様のデータ分析にも取り組んでいく予定です。
当社の業務に関心のある学生さんは、是非門をたたいてください。
長い歴史のある企業だからこそ、お客様の大切さ、信頼の重さが伝わってくるインタビューでした。
お客様の課題を解決するというのは、現代人の多様化する趣味・嗜好に寄り添ったご意見で、大変印象深かったです。
また、陰ながら会社と業界を支えるアパ研と研究員の方々の存在は、服が好きな人たちにこそ、広く認知して欲しいと思いました。
終始、北畑社長と藤吉社長の誠実さに惹かれる取材でした。
お忙しい中ありがとうございました。
橋爪彩夏(実践女子大学 生活科学部 4年)